北朝鮮の「愛国者」はこうして金正恩氏に背を向けた

それでもなお、Aさんは脱北した娘に「戻ってくればいい、そうすれば許してもらえる」と帰国を促していた。

しかし2015年7月の初め、電話で「このチャンスを逃したらもう会えないかもしれない」と言われた。従業員から監視されていたことを知り、国への忠誠心も期待も失っていたAさんは、二つ返事で韓国に行くと答えた。ダメ元で脱北を提案した娘は、母の言葉に驚いたという。

その年の7月、北朝鮮では地方人民議会代議員選挙が行われた。当局は選挙の際、選挙人名簿を元に住民の動向調査を行い、行方不明者がいれば脱北を疑って調査に乗り出す。そんな敏感な時期をやり過ごしたAさんは、選挙が終わった直後に北朝鮮から脱出した。