何故なら、北朝鮮がすでに核武装国だからだ。核兵器は、ミサイルに搭載して飛ばす以外にも使い方はある。例えばどこかの地下に核爆弾が埋められていた場合――つまりは「核地雷」が仕掛けられていたら、そこに侵攻した米軍や韓国軍の兵士は一撃で消し飛ばされ、一度に数千人から下手をすれば万単位の犠牲者が出ることになる。
そんなリスクには、民主国家の軍隊は今や耐えられないのだ。
だが、いくら北朝鮮軍の主力を壊滅させても、金正恩党委員長から核戦争能力を完全に取り上げない限り、それは「軍事的な解決」とは言えないはずだ。
本当の意味で「軍事的な解決」を得ようと思うならば、金正恩体制の変更を望む北朝鮮国内の人々と連携し、「政治的な解決」も合わせて追求すべきなのだが、それこそが、米国も韓国も日本もまったく準備ができていない部分なのである。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。