まず、貿易会社の幹部は、中国から覚せい剤の原料となるフェニル酢酸を小麦粉に偽装して取り寄せる。見かけが似ており、見ただけでは区別できないため、税関を通ってしまうのだという。
しかし、最近は税関検査が厳しくなり、原料の取り寄せができないこともある。そのような場合には、原料を国内で調達する。供給源となっているのは、国を代表する科学研究機関である国家科学院だ。
科学院所属の科学者たちは、フェニル酢酸の原料の一つ、シアン化ベンジルの作り方を独学で習得し、製造している。おそらく科学院の幹部と人民保安省(警察)、国家保衛省(秘密警察)が黙認、または結託しているものと思われる。