韓流が流行するにつれ、町の女性たちは顔にきゅうりを貼り付けたり、牛乳を塗るようになった。しかし、韓流ドラマで見たことを真似しているというのは公然の秘密だ。金正恩党委員長は、一般庶民が韓流ドラマや海外コンテンツに触れることを厳しく統制している。一昨年5月には、韓流ドラマのファイルを保有していただけの容疑で、女子大生を摘発し、過酷な拷問を加えたほどだ。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)それでも、さすがにきゅうりパックまでは取り締まれないようだ。水につけて冷やしておいたきゅうりを切って顔に貼れば、ひんやりにして気持ちいいという。ちなみにきゅうりは、市場で1キロ1100北朝鮮ウォン(約14円)で売られている。旬が過ぎれば値段が上がるため、女性たちは大量購入して塩漬けにするというが、さすがにパックには使わないようだ。
ところで、パックに使った後のきゅうりはどうするのだろうか。なんと、さっと洗って夫の酒のツマミとして出すという。妻の味が染みこんだきゅうりの味はいかほどのものなのか、ぜひ夫に聞いてみたいものだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。