そのため、兵士たちはまともな食事にありつけず、栄養失調になる者が後を絶たない。そこでこうした違法商売に乗り出すというわけだ。
また、兵役が終わった後、社会に戻っても先立つものがなくては生きていけない。そのため、現役の時から商売でせっせと生活資金を貯めておくのだ。北朝鮮当局は、兵士たちの市場への出入りを禁止したり、密輸を取り締まったりしているが、今の北朝鮮では商売をしなくては生きていけない。自分の手で現金収入を得て、市場で食べ物を買わなければ餓死してしまうからだ。
この基本的な問題が解決しない限り、兵士たちの裏ビジネスは拡大する一方だろう。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。