ここで言う統治資金とは、正規の貿易などの取引によるものではなく、違法な手段で集められた秘密資金に限定されるという。秘密資金の全貌は明らかではないが、一つ言えるのは、独裁者とごく近しい幹部しか近づくことができないということだ。
たとえば現在、北朝鮮外交の司令塔と見られている元駐スイス大使の李スヨン氏は、金正日氏の信任が厚く、金正恩氏のスイス留学時代に世話役を務めていた。駐スイス大使を務めていた頃には、金一族の秘密資金の管理をしていたと言われている。
北朝鮮に対する金融制裁が強まっているだけに、数十億ドル規模ともいわれる秘密資金の管理を任せられる人物が備えるべき条件は、以前より厳しくなっていると考えられる。日本の大阪にルーツを持つ異色の独裁者でもある金正恩氏にとって、金正哲氏がかけがえのない存在となっている可能性は低くない。
(参考記事:金正恩と大阪を結ぶ奇しき血脈)李潤傑氏によると、金正恩氏の父である金正日総書記の時代には、金正恩氏の母親違いの兄である金正男(キム・ジョンナム)氏が同様の役割を担ってきた。