人権団体や脱北者団体から批判の声が上がる中で、韓国政府から独立した人権擁護機関である国家人権委員会は、中国で拘束された脱北者5人家族が、自ら命を絶ったとされる情報に言及しつつ、中国に対して脱北者の強制送還中止を要求。それと同時に、韓国政府に対しても適切な対応策を出し、中国国内にいる脱北者保護のために外交的努力を尽くすことを求めた。
それでもやはり、中国がこうした求めに応じる可能性はほとんどないと見られる。脱北者にとっては、命がけで越境した先の中国もまた、人権不毛地帯であり、そこで二重三重に発生する人権侵害は、北朝鮮に民主化の機運が生まれることを妨げてもいるのだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。