「何でもかんでも死刑」に深い懸念…金正恩体制の人権侵害

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そうした事例、薬物犯罪を含む一部の犯罪において、公開処刑が行われたケースが複数、把握されたという。例えばある脱北者は「2014年8月に、公開裁判や公開処刑を見学せよという指示があった。約300人の住民が運動場に集まって処刑現場を見た」と証言している。こうした情報はデイリーNKにもたらされている。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、保衛省は昨年まで、韓流ドラマ・映画の視聴、脱北やそのほう助、不穏な言動をした者を公開裁判にかけて、一部を銃殺にしていた。

(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

しかし、こうした「見せしめ」が逆効果を生み、金正恩氏に対する世論が悪化したことから、正恩氏は、公開処刑や人権侵害を禁じる命令を出したという内部情報もある。もちろん、公開していた処刑を、非公開にしたからといって、北朝鮮の人権状況が改善されたことにはならない。

果たして、北朝鮮の人権状況は具体的にどうなっているのか。次回から、白書で言及された事例を交えて見ていきたい。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記