北朝鮮の人々にとって「追放」という言葉は、大きな過ちを犯したために受ける罰という意味で受け止められる。詳細はわからなくても、「大使が追放された」ということは、北朝鮮が何か非常に大きな過ちを犯したと受け止められるだろうと情報筋は見ている。
先述の平壌の内部情報筋は「いくら厳しく統制しても、人の口に戸は立てられない」「想像を絶する事件だけあって、うわさはさらに広がるだろう」と述べている。
(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」)また、50代以上の平壌市民は、1990年代に金正男氏のことを「後継者様」や「ご子息」などと尊称をつけて呼んでいたことを覚えているとのことで、今回の事件は人々に相当なショックを与えている模様だ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。