与正氏が単に独裁者の血縁であるだけであれば、仮に将来、北朝鮮の体制に変化が起きた後も、彼女は平穏な人生を送ることができるかもしれない。何故なら、どのような家庭に生まれるかは、誰にも選択できないことだからだ。
しかし、彼女個人が人権犯罪の容疑者となってしまえば、厳しい追及に遭う可能性が高まる。そうならずとも、周囲は容易にそのことを忘れてはくれない。
それもこれも、彼女の祖父と父、そして兄が続けてきた恐怖政治に原因がある。正恩氏は、肉親を思うならばこの事実と向きわなければならないわけだが、彼に果たして、そのようなことができるだろうか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。