いみじくも同じ5月、36年ぶりに開催された朝鮮労働党第六次党大会における事業報告の演説で、金正恩党委員長は先軍政治を「勝利の宝剣」と称し、父・金正日と祖父・金日成からの伝統と位置付けた。軍隊の実情からかけ離れた評価と言わざるを得ないだろう。
収賄の罪で免職された軍人も謹厳で知られた人物で、生活苦に耐え切れず今回、はじめて賄賂に手を染めたというから皮肉なものだ。彼もまた体制の被害者なのである。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。