北朝鮮でも、青少年たちが、親の目を盗んでこっそりポルノビデオを見るケースはあった。これだけなら「北朝鮮の青少年たちもポルノを見たい欲求には勝てない」と笑ってすませられる。しかし、過去には、その内容を真似て、野外で性行為、つまり「青姦事件」を引き起こし、北朝鮮社会に衝撃を与えていた。
(参考記事:北朝鮮、「中学生青姦事件」に衝撃広がる…韓流ポルノの影響か )また、今年の3月中旬には、労働党大会を前にして「70日戦闘」という大増産運動が進められる最中にもかかわらず、ポルノビデオを見ながら乱交パーティーに及んでいた男性とその知人たちが逮捕される事件が発生した。
事件を知らせてくれた北朝鮮国内の取材協力者によると、裸になった3組の男女が男性の自宅の一室でビデオの内容を真似て行為に没頭していた所を当局に踏み込まれ、現場でお縄となったという。
(参考記事:「ポルノ見て乱交」で収容所送りも…恐ろしい北朝鮮の風紀取締り)「青姦」や「乱交」は、いささかヤリ過ぎかもしれないが、北朝鮮人も「普通の人々」であり、性に対する欲求を国家が徹底的に取り締まることは不可能だ。ポルノに関する事件も、娯楽を認めず、徹底的に情報を遮断する金正恩体制に対する庶民たちの抵抗という見方は少々大げさだろうか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。