そんなかすかな希望を抱く人もいたが、北朝鮮当局は10日、工業団地の「北朝鮮国内にある韓国企業と関係機関のすべての資産を完全に清算(没収)する」と発表。その希望は無残にも打ち砕かれた。
(参考記事:北朝鮮国民、開城「中断」で金正恩氏に失望の嵐)開城工団という「地上の楽園」を奪われた人々の怒りは、体制への不満として現れている。
彼らは、「命綱が絶たれた」 「10年間積み重ねてきた成果が、指導者の気まぐれで水の泡と化した。世界広しといえども、北朝鮮でしか見られない悲劇」 「明るかった開城が、あっという間に暗黒の街と化してしまった。政府当局に対して反感を抱くのは当然の流れだ」 という反応を示している。
北朝鮮当局にとって、ここまで高まった不満を抑えることはそう容易ではないだろう。南北関係を改善して工業団地を再開させることが一番の方法だが、北朝鮮国民のことを顧みず対決姿勢を露わにする金正恩第一書記には、その選択肢はないようだ。
(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。