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そもそも北朝鮮にとって、日本との関係改善に動くメリットはほとんどなくなっている。

日朝関係に関する記事などを見ると、「北朝鮮は日本との関係を改善し、経済支援を引き出したがっている」との説明をよく見かける。北朝鮮が、過去にそのような目的をもって行動してきたのは事実だし、今後も長期的には、日本から経済的利益を引き出すことを目指すかもしれない。

しかし現在の情勢下で、日本が経済支援を行うなどあり得ないということを、北朝鮮としても良くわかっているはずだ。仮に、北朝鮮が拉致問題で誠実に対応したとしても、弾道ミサイル開発と核開発の問題が残る。さらには日本やEUが国連で暴いた人権侵害の問題もある。

(参考記事:国連委、北朝鮮の人権侵害を非難する決議採択…日本とEUが主導

それらをすべて解決して支援を引き出すなど、とうてい出来っこない。とくに人権侵害は、核やミサイルなどと違ってカネ(経済支援)で取引できる問題ではなく、だからこそ、金正恩氏はヤケクソになって暴走していると見ることもできる。

(参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・強姦・公開処刑

もちろん、北朝鮮の暴挙を黙って見ているわけには行かないから、制裁措置を取ることは当然だ。しかしそれと同時に、北朝鮮の「体制変更」を見据えるなど、別次元で戦略を見直す時期に来ていると言える。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記