ちなみに、この事件の政治的な幕引きのため、韓国側の密使として田中角栄首相らと折衝したのが「ナッツ姫」こと趙顕娥(チョ・ヒョナ)元大韓航空副社長の祖父・趙重勲(チョ・ジュンフン)氏だった。
(参考記事:田中角栄と「ナッツ姫」祖父が残した日韓政治の闇)その後、調査隊は情報保全隊に生まれ変わり、さらに2009年には、陸海空の3自衛隊にあった情報保全隊が「自衛隊情報保全隊」に統合・強化された。表向き、防衛秘密の保護と漏えい防止を任務としているが、活動内容はそれだけではない。共産党などは、「実際の中心的任務は市民の平和運動などを監視すること」としているが、それも活動の一部分だろう。
ある公安担当記者は情報保全隊を「公安以上に秘密のベールに包まれている」と指摘するが、彼らが北朝鮮や中国、ロシアの動向に目を凝らしているのも事実だ。
彼らの働きが日本の安全保障にどのように影響しているのか、興味深いところだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。