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この処刑された人物こそ、当時の国家安全保衛部副部長だった柳敬(リュ・ギョン)氏である。最近になって、柳氏本人のみならず一家全員が銃殺されたこともわかった。

かつて、小泉訪朝を巡り日本側と水面下で接触していた柳氏は体制への忠誠心が厚く、金正日総書記から絶大な信頼を得ていたとされる。しかし、ある出来事を境にその運命は暗転した。

2010年12月5日、南北首脳会談実現のために特使としてソウルを訪問した柳氏は、李大統領から面会を断られ、何の成果も出せないまま北朝鮮に帰国した。このとき、柳氏はソウル滞在を1日延長したが、帰国後に提出した報告書でその際の行き先をきちんと記載しなかったことが問題視されたようだ。

粛清劇の「黒幕」も姿消す

2011年2月初め、北朝鮮当局は柳氏と在日朝鮮人の夫人を強制的に離婚させた上で、自宅で残りの家族全員を銃殺したとされている。情報当局者が、次のように話す。

「糸を引いていたのは正日氏の義弟の張成沢氏だったはずだ。体制内での権力基盤を盤石にするため、党内のライバルを暗殺などの手口で次々に消していた張氏は、次に保衛部に刃を向けた。保衛部のパワーが、正恩氏の権力固めの過程で肥大しすぎたと見ていたのだろう」

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柳氏は、米国のクリントン元大統領の訪朝を実現するなどして、保衛部で足場を固めたとされる。正日氏は柳氏の実力を認め、張氏を含めた側近の動向を監視させていたようだ。