北朝鮮当局が、兵役中の兵士を早期に除隊させた上でロシアに労働者として派遣している実態が明らかになった。家族の間では「軍にいるよりも海外で稼げる方がましだ」との期待がある一方、「戦場に送られるのではないか」との不安も広がっている。
デイリーNKの内部消息筋によると、当局は先月末、両江道や慈江道に駐屯する部隊で7~8年にわたり服務してきた兵士の一部を選抜し、早期除隊措置を取った上でロシアに送り出した。具体的な人数や派遣先の詳細は確認されていないが、これまで北朝鮮の労働者がロシアの建設現場に多数投入されてきた経緯から、今回の対象者も同様の分野に配置された可能性が高いとみられる。消息筋は「最近では50~60代の男性も羊毛の洗浄作業などでロシアに出ているが、今回の除隊兵は主に建設分野に回されたとみられる」と証言する。
こうした措置をめぐり、家族の受け止めは複雑だ。ある関係者は「どうせ軍にいても過酷な生活を強いられるだけで、外貨を稼げるなら悪くないと考える家庭もある」と指摘する。とりわけ生活が厳しい家庭では、子どもが海外で収入を得ることへの期待感が強いという。
兵士自身の間にも、除隊後に炭鉱や農村などへの強制配置を受けるより、海外派遣の方がましだと受け止める空気があるとされる。
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一方で、ロシアという派遣先の特殊性が不安を増幅させている。あと数年で満期除隊となるはずだった息子が、任期終了直前に国外に送られることに戸惑いを隠せない親も少なくないという。消息筋は「ロシアで戦闘に関わり命を落としたとされるケースを見聞きしているため、たとえ『労働』名目でも安心できない」と語る。
実際、ある兵士が出入り先を通じて家族にロシア行きを伝えた際、親が「派遣」を「派兵」と聞き違え、泣き崩れた例もあったという。ロシアを巡る情報が限られる中で、家族の不安が過剰に膨らんでいる実態がうかがえる。
北朝鮮は国連制裁の下で外貨獲得手段が制約される中、海外労働者の派遣を重要な収入源としてきた。今回のように兵役中の人員を動員する形での派遣は、労働力確保の逼迫や外貨需要の高まりを反映した措置とみられるが、実質的な「人的資源の輸出」と言える。
経済的利益への期待と安全への懸念が交錯する中、兵士と家族の間に広がる動揺は、対外依存を強める北朝鮮経済の歪みを映し出している。
