そして今回、もう一つ見逃せないのが、これまで頻繁に軍事視察に同行してきた娘ジュエ氏の不在だ。金正恩氏は近年、女性を幹部に積極的に登用しており、男尊女卑とされる社会の中で、あえて女性を前面に押し出す動きが目立つ。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

今回の女性特殊部隊の演出もその延長線上にあり、単なる軍事誇示にとどまらず、将来的な「ジュエ体制」を見据えた環境づくり、いわば布石として位置づけることができる。

北朝鮮軍女性特殊部隊の対人戦闘訓練(2026年3月29日付労働新聞)
北朝鮮軍女性特殊部隊の対人戦闘訓練(2026年3月29日付労働新聞)

それだけに、ジュエ氏の不在は強い違和感を残す。北朝鮮は今、「見せるもの」と「見せないもの」を徹底的に使い分けている。女性兵による暴力的な訓練は誇示しながら、後継を象徴する存在はあえて隠す。そのコントロールこそが、ジュエ後継体制へのメッセージなのかもしれない。