金正恩総書記が朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の特殊部隊の訓練を視察したと、北朝鮮の国営メディアが3月29日に報じた。公開された映像では、実戦を想定した激しい対人戦闘訓練が確認され、いわば「見せる訓練」の典型といえる。

今回の報道では、女性特殊部隊による訓練という異例の演出が強い印象を残している。通常、この種の近接戦闘訓練は男性兵が中心となる。しかし、あえて女性兵を強調することで、「ここまで徹底する軍隊だ」という戦闘力と覚悟を内外に誇示する演出とみられる。

一方で印象的なのが、訓練を見守る金正恩氏の表情だ。緊張感が支配するはずの現場で、余裕の笑みどころか爆笑するなど、強烈な違和感を残す場面となっている。

また、細部に目を向けると、特殊部隊員でありながら女性兵の多くが整ったメイク姿で登場しており、ここにも「見せるための演出」が色濃く表れている。

そして今回、もう一つ見逃せないのが、これまで頻繁に軍事視察に同行してきた娘ジュエ氏の不在だ。金正恩氏は近年、女性を幹部に積極的に登用しており、男尊女卑とされる社会の中で、あえて女性を前面に押し出す動きが目立つ。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

今回の女性特殊部隊の演出もその延長線上にあり、単なる軍事誇示にとどまらず、将来的な「ジュエ体制」を見据えた環境づくり、いわば布石として位置づけることができる。

それだけに、ジュエ氏の不在は強い違和感を残す。北朝鮮は今、「見せるもの」と「見せないもの」を徹底的に使い分けている。女性兵による暴力的な訓練は誇示しながら、後継を象徴する存在はあえて隠す。そのコントロールこそが、ジュエ後継体制へのメッセージなのかもしれない。