北朝鮮で、先月の朝鮮労働党第9回大会以降、当局は思想・文化分野の締め付けを強めており、地方都市の順川市や首都平壌市では公開裁判が相次いで開かれた。デイリーNKの内部情報筋によると、薬物事犯に加え、韓国ドラマなどの視聴を禁じた「反動思想文化排撃法」違反者に対しても重い刑罰が科され、住民に対する威嚇効果を狙った措置とみられる。
北朝鮮では近年、韓国の映像コンテンツや音楽の流入が広がり、若年層を中心に人気が浸透しているとされる。当局はこれを体制の安定を揺るがしかねない「思想的浸透」と位置付け、厳罰化を進めてきた。一方で、こうした統制の裏側では、特権層による韓流コンテンツの享受が以前から指摘されてきた。国外情報に接しやすい幹部たちの間では、禁制品とされる映像作品が密かに流通しているとの証言もある。一般住民に厳格な規制を課す一方で、上層部が例外的にそれらを楽しんでいるとすれば、体制の二重基準を示すものといえる。
こうした中、過去の権力中枢に関する興味深い証言もある。北朝鮮情勢に詳しい関係者によれば、韓国の情報機関がかつて通信傍受したとされる内容の中で、故張成沢(チャン・ソンテク)氏が、処刑される約1年前に「正恩が食事も取らず夜も眠らず、あんなモノにハマっている」と周囲に語っていたとされる。この「あんなモノ」が韓国ドラマだったという。
(参考記事:「一家が跡形もなく消えた」北朝鮮”赤い貴族”の許されざる罪)張氏はかつて体制ナンバー2と目される実力者だったが、2013年に「反党・反革命行為」などの罪で失脚し、公開の場で拘束された後、国家転覆を図ったとして処刑された。その過程は異例の速さと公開性を伴い、張氏につながる膨大な人々が粛清され、権力基盤の強化を急ぐ指導部の姿勢を内外に印象付けた。
(参考記事:【写真】北朝鮮の「清純派女優」はこうして金正恩に抹殺された)
張氏が処刑された背景については謎も多いが、金正恩氏が自分を見下したような張氏の態度、その権勢を嫌っていたというのが定説だ。もしかした金正恩氏が嫌った張氏の「態度」の中には、韓流にハマりすぎた甥っ子への「呆れ」も含まれていたのではないか。
そしてその後、北朝鮮当局が重刑を乱発しながら韓流を駆逐しようとしていることにも、金正恩氏自身の「中毒体験」が反映されているのかもしれない。
