さらに、イランの防空網が電子戦によって事実上沈黙させられたとの情報は、金正恩氏に強烈な心理的衝撃を与えるだろう。北朝鮮も防空システムの近代化を進めてきたが、米国の圧倒的な電子戦能力の前では、指導部の安全が根本から揺らぐという現実を突きつけられた形だ。不安に駆られた独裁者が、内部引き締めや軍事的示威行動をエスカレートさせれば、偶発的衝突や誤算の連鎖が起きかねない。

(参考記事:電子戦で沈黙したイラン防空網 北朝鮮と酷似する脆弱構造、ただし“地下国家”の壁

とりわけ懸念されるのは、危機回避を狙った強硬姿勢が、逆に相手の警戒心を高め、軍事的緊張を増幅させる悪循環である。イランの事例が示すように、米国は斬首作戦を「実行可能な選択肢」として明確に位置づけた。これは北朝鮮に対する強烈な警告であると同時に、金正恩体制にとっては、核武装だけでは生存が保証されないことを突きつけるメッセージでもある。

東アジアの安定を左右するのは、米朝双方がいかに自制と戦略的忍耐を保てるかにかかっている。だが、指導者の心理と国内政治が絡み合う状況下で、理性的判断が常に優先される保証はない。イランで起きた「斬首」の現実は、朝鮮半島情勢にも重い影を落としている。