イスラエルと米国による対イラン先制攻撃の是非、すなわち国際法上の合法性や正当性については、評価が分かれる。だが、少なくとも両国が「イランの核武装阻止」という明確な目的を掲げ、軍事行動を含む具体的な選択肢を現実の政策として検討・行使している点は重い。

一方で、同じく核・ミサイル能力を急速に強化してきた北朝鮮に対して、国際社会は制裁と対話を繰り返すばかりで、核武装そのものを物理的に阻止する行動や議論は、事実上、消滅している。

安全保障の基本概念として、脅威は「能力×意思」で測られる。北朝鮮はすでに核弾頭と弾道ミサイルの実用的能力を獲得し、能力の面では疑いの余地がない。他方、実際に核兵器を使用する「意思」については、抑止戦略や体制維持の論理が複雑に絡み合い、外部から正確に測ることは難しい。しかし、意思が不明だからといって、能力の増大を放置すれば、抑止の不確実性は高まるばかりである。

ここで懸念されるのが、対イラン先制攻撃が北朝鮮に与える心理的・戦略的影響だ。核開発の最終段階にある国家が、軍事力によって攻撃される現実を目の当たりにすれば、北朝鮮は「核武装こそが体制存続の唯一の保証だ」との認識を一層強める可能性が高い。結果として、核・ミサイル開発を加速させるだけでなく、有事における先制使用の誘惑を高める危険すらある。

(参考記事:イランが「米空母撃沈も」と豪語する、北朝鮮製の”小さな潜水艦”

イランに対して強硬な姿勢を示しながら、北朝鮮には事実上の黙認を続ける現状は、国際秩序の一貫性を損ない、抑止の論理を歪める。軍事行動か対話かという二項対立ではなく、核武装を既成事実化させないための現実的な圧力と外交の組み合わせを、改めて構築する必要がある。さもなければ、沈黙のうちに北朝鮮の核戦力だけが強化され、地域の不安定化は不可逆的な段階に進むだろう。