密輸を主導した社長は逮捕後に公開銃殺された。当局はその処刑の様子を、数百人の外貨稼ぎ関係者に詳細に説明し、「見せしめ」とした。関係者の脳裏には、今もその光景が焼き付いている。

今回の検閲で保衛部は、資金の流れや取引内容を徹底的に追及。「外貨をどのように稼いだのか、一つ残らず説明しろ」と迫るという。わずかな不整合でも「スパイ容疑」をかけられかねず、関係者は極度の緊張と疲労に追い込まれている。

彼らが追い詰められる理由はそれだけではない。北朝鮮では、どの部門でも公式給与だけでは生活できず、職権を利用して“取り分”を確保するのが暗黙の了解となっている。しかし、これが検閲で発覚すれば、「国家財産の横領」として厳罰の対象になる。

さらに、国際電話の利用には煩雑な手続きが必要なため、国境地帯では中国の携帯電話を密かに使う関係者も多い。だが、これも重大な違法行為とされ、摘発されれば深刻な処罰を免れない。

(参考記事:金正恩への「裏切り」でボロ儲けする、北朝鮮の治安機関

現地では、「ノルマを達成するには、事前申告していない取引にも手を出さざるを得ない。それをすべて検閲されたら、どうやって外貨を稼げというのか」との不満が噴出している。

制裁と統制の狭間で、命がけの外貨稼ぎを強いられる北朝鮮の現場。その裏側には、恐怖と疑心暗鬼が渦巻く、仁義なき世界が広がっている。