北朝鮮の首都・平壌では最近、携帯電話の窃盗被害が相次いでいる。
平壌のデイリーNK内部情報筋によると、路上や公園で通話したり、メールを送ろうとして携帯電話を取り出した瞬間にひったくられる被害が急増している。
北朝鮮で最も豊かな平壌と言えども、夜には窃盗や強盗が相次いでおり、犯人が正体不明のガスや薬物を凶器として使うケースすら報告されている。
(参考記事:北朝鮮国民が緊張…「謎の薬物で眠らされる」新たな恐怖)いま横行している携帯電話のひったくりは、真っ昼間の人の多いところでも起きている。平壌は、携帯電話の所有率が他の地域に比べて高く、路上で使用している人が多いため、犯人からするとターゲットだらけだ。
犯人は、盗んだ携帯電話を修理工場の従業員に30ドル(約4650円)で売り払っている。修理屋は携帯電話を初期化した後、中古業者に100ドル(約15500円)で転売する。業者は消費者に120ドル(約1万8600円)から150ドル(約2万3200円)で販売する。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面このような盗品市場が形成されており、かなりの儲けがあるため、盗難事件は増える一方だ。
安全員(警察官)は、修理工場や中古業者が扱っている品物の中に盗品が混じっていることを認識しながら、取り締まろうとしない。業者が盗品を扱っていることをネタにして、ワイロをせしめることに必死なのだ。
(参考記事:「これでコメを買って」と盗品を差し出す子どもを前に泣き崩れる北朝鮮の親たち)逆に言えば、ワイロさえ渡しておけば、上層部から取り締まりの厳命が出ない限り、盗品販売が続けられるということだ。これでは犯行が減るわけがない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ただ、安全員は、党幹部やその家族が窃盗被害に遭った場合、点数稼ぎのために関係者を逮捕し、携帯電話を押収する。窃盗犯が、盗品を修理工場や中古業者を迂回させるのは、足がつかないようにするためだ。
窃盗犯は根っからのワルではなく、生活に困って犯罪に手を染めた人たちだという。平壌は他の地域より食糧事情がマシだが、苦しいことには変わりなく、生きていくため窃盗に手を出した。
「商売で儲けても、北朝鮮ウォンの価値がどんどん下がるため、損ばかりする。生活が苦しいから、他人の物を盗んで売る泥棒が増える一方だ」(情報筋)
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そもそも、昨今の治安悪化は、市場が担っていた食糧の供給を国が取り戻そうとして、国家が市場への介入を強めたことに端を発する。
国は、穀物は国営の糧穀販売所でのみ販売を認め、市場での販売を禁止した。市場での商売で収入を得ていた人々は、収入が激減して食うのにも困るほどになった。勤め先から給料をもらって暮らしている人は、20倍以上も賃上げの恩恵を受けているが、それも物価高騰で帳消しになった。
結局、窃盗ではなくとも、何らかの違法行為をしなければ、生きていけないのだ。