北朝鮮の突撃隊というと、ナチスドイツのそれを想起させ、おどろおどろしい印象を受けるかも知れない。だが、実際は単なる建設労働者の集団だ。
地元の朝鮮労働党委員会、行政当局、職場単位で立ち上げられ、主に国家的な重要建設の現場に投入される。参加は半強制で、賃金ももらえず、食事や宿舎などが非常に劣悪で、安全装備もろくに支給されない。
食べ物欲しさに犯罪を働くなど、派遣された地域の住民の評判はよくない。今年7月末に洪水による甚大な被害を受けた新義州(シニジュ)の災害復旧現場周辺でも、様々な問題を引き起こしているようだ。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
(参考記事:子供の誘拐が続発する北朝鮮で首都市民の「差別意識」が浮き彫りに)新義州市安全部(警察署)は先月、今月と2カ月連続で、夜の取り締まりを強化している。元々、中国との国境に接しているため、夜間には厳しい警戒態勢が敷かれているが、先月からはパトロール要員が2倍以上に増やされた。
突撃隊員のよからぬ行いのせいだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面彼らは、夜になると寝泊まりしているテントを抜け出す。飲みに繰り出す程度ならさほど大きな問題にはならないが、問題はその後だ。酒に寄って乱闘騒ぎを起こすのだ。
先月27日には、白頭山英雄青年突撃隊の隊員3人が、酒を飲んでいた最中に、他の突撃隊の隊員5人に罵詈雑言を浴びせかけ、乱闘騒ぎへと発展してしまった。8人は、安全部夜間巡察隊に身柄を拘束された。
(参考記事:【動画】北朝鮮労働者とタジキスタン労働者、ロシアで大乱闘)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面今後は、所属している突撃隊中隊の思想闘争会議にかけられる予定だ。他の隊員の前に立たされ、とっかえひっかえ批判され恥をかかされるという吊し上げだ。その後、最悪の場合、教化所(刑務所)送りになるかもしれない。
批判されているのはこの8人だけではない。今回の事件をきっかけに、今まで突撃隊員がやらかしてきたことが蒸し返され、突撃隊指揮部が激しく批判されているのだ。新義州市安全部は事件の前、指揮部に対して、隊員が夜間に無断外出しないように取り締まって欲しいと要請した。
指揮部は、各中隊に、当直の人員を増やし、夜間の点呼の頻度を増やすなどの対策を取ると同時に、無断外出が発覚すれば、批判と処罰を行えとの指示を下した。ところが、その直後に事件が起きてしまった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「毎晩、数人の突撃隊員が夜間巡察隊の取り締まりにひっかかる。飲酒して摘発されるケースが最も多いが、女性問題や窃盗で摘発される事例も多い」(情報筋)
(参考記事:北朝鮮国民が目を背ける「見せしめ射殺体」の衝撃の現場)取り締まりの強化には限界がある。
「ほとんどの突撃隊員は、夜になったら酒が飲めると我慢して、昼間に懸命に働いている。ポケットマネーで酒を買って飲むことは防ぎきれない」(情報筋)
上部が処罰すると大騒ぎしたところで、空腹に耐えながらきつい労働を行っている突撃隊員は、酒を酌み交わして慰め合っうしかない。当直に当たる隊員も、同じ立場にあることに変わりない。無断外出しようとする隊員がいても、お互い様だと見て見ぬ振りをするのだ。
彼らの待遇を改善することは考えず、とりあえず取り締まることしか考えない北朝鮮式のやり方で、血の気の多い彼らを押さえつけることはできないだろう。