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北朝鮮で実りの秋は、「緊張の季節」だ。農民は、自らの手で収穫したコメを盗み出そうとする。国の買取価格が異常なほど安い上に、平壌市民配給用の「首都米」、有事の際に備えた「備蓄米」、そして、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に供給する「軍糧米」など、搾取のフルコースに遭うからだ。

監視の目を避けてコメを盗み出し、より高値で買ってくれる市場に持ち込もうとするのだが、そうはさせじと武装軍人が警備に立ち、半ば強奪する形でコメを持ち去る。

今年に入って、国の買取価格は多少引き上げられたものの、市場の買取価格には及ばない。かくしてコメの盗難が相次ぐが、今年は若干様相が異なる。「青田買い」ならぬ「青田盗み」が横行しているのだ。黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

韓国との軍事境界線に程近い、碧城(ピョクソン)郡の複数の農場で9月初旬、まだ充分に実ってもいない稲が大量に盗まれる事件が発生した。

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農場は例年、収穫直前から厳重な警備を行うが、今年はそのはるか前から警備を強いられている。さもなくば、収穫期を迎える頃には、稲がすべて刈り取られ盗まれるという事態になりかねない。

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その理由について情報筋は、旧暦8月15日の秋夕(チュソク)が関係していると説明した。

先祖に祈りを捧げるこの日には、墓または自宅にこしらえた祭壇に、肉、魚、果物など様々なごちそうをお供えする。祭祀が終わった後には、「飲福」と言って、お供え物も家族皆で分かち合って食べる。

ところが、食べ物を育てる農民でありながら、そんなことが「夢のまた夢」なのだ。

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黄海南道と言えば、北朝鮮を代表する穀倉地帯のひとつだが、そこでもコメが手に入らないほどの状況に陥っている。

「わが国(北朝鮮)の主要穀倉地帯の黄海南道は稲の栽培が活発に行われているが、秋夕用の新米は農民ですら受け取るのが難しい。穀倉地帯に住んでいるのに、一杯のコメも食えない。秋夕には白飯を一杯だけでも口にしたいという心情から、まだ実ってもいない稲を盗み出すのだ」(情報筋)

北朝鮮でお供え物として使われるのは新米だ。職場ではそのために新米を少量配給したが、あまりに量が少なくて、農場で盗む人が続出しているようなのだ。

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摘発された人々は口を合わせて「秋夕なのだから家族と白飯を一度でいいから食べたかった」と困窮ぶりを語り、見逃して欲しいと哀願するそうだ。

さらに、彼らを通じて、まだろくに実ってもいない稲をうまく精米すれば、白飯になるという手法が広がった。

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水に浸して熱を加えて蒸した後で日陰で干すと、ツヤツヤの銀シャリのようなコメになるのだそうだ。農民の間では、盗難対策よりこの手法のことが大きな話題になっている。白飯が食べられないのは、盗む方も盗まれる方も同じなのだ。

汗水垂らして働いても、すってんてんになるまで搾取され、自分の育てたコメすら口にできない。そんな状態でやる気が起きるわけがない。