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北朝鮮がゴールドラッシュに沸いている。

平安北道(ピョンアンブクト)の雲山(ウンサン)周辺は、古くから大規模な金脈があることで知られている。米国人のモースが19世紀末、金鉱の運営権を大韓帝国の高宗皇帝から獲得し、近代的な設備を導入したのをきっかけに、大々的な金の採掘が行われるようになった。その埋蔵量の正確な数値は不明だが、21世紀の今でも世界有数の規模だと言われている。

現在、雲山や、そこから南西に離れた博川(パクチョン)の金鉱は、朝鮮労働党中央委員会(中央党)、護衛局(金正恩総書記の身辺警護に当たる部署)などが運営している。北朝鮮で、金は国有財産とされており、民間人の採掘、売買、所有は厳しく禁じられている。違反者は死刑を含めた重罰に処される。

それでも非常に儲かるため、密売や密輸に手を出す人が後を絶たなかった。

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そして最近になり、砂金採りを行う民間人が増えていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。理由は極めてシンプルだ。

「(民間人の金の採掘を取り締まる)機関のイルクン(幹部)もカネが必要だ」(情報筋)

イルクンたちは生活費を稼ぐため、あるいは私腹を肥やすために、民間人からワイロを受け取って砂金の採取を黙認していたが、最近では、砂金採りに手を出す人がさらに増えたとのことだ。

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博川は銀、雲母、黒鉛の鉱山があることで知られているが、それら鉱山の労働者は最近、出勤しなくなってしまった。上司にワイロを渡し、出勤扱いにしてもらい、空いた時間で商売をする「8.3ジル」を行い、砂金採りに精を出しているのだ。

博川の鉱山では、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の時期にも食糧配給が途絶えることはなく、全国的に餓死者が続出する中でも労働者は問題なく暮らせていた。

しかし最近では、配給が出ても労働者本人の分だけで家族の分はなかったり、完全に欠配したりすることが増えている。そこで生活のために砂金採りに出ているのだ。鉱山の方もまんざらではないようだ。

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「鉱山企業所も『8.3ジル』でカネを上納してくれる労働者を求めている。労働者は金鉱に行ってカネを稼ぎたい。両者の思惑が一致したのだ」(情報筋)

労働者が持ち帰った砂金は、家族や地域住民が選り分けたり、細かく粉砕したりする作業を行っている。もちろんそれで収入が得られる。

そうやって得た金は、「クムジャビ」が買い取る。直訳すると「金を捕まえる人」となるが、当局の取り締まりが激しくなり、一時は姿を消していたものの、砂金採りが再び活発になってからはまた姿を表した。

このクムジャビだが、元々は金鉱の労働者で、厳しい監視の目を盗んで、ちょびちょびと金をくすねていた人々だという。

一時期、姿を消していた砂金採りや金の売買業者が復活した背景は明確でないが、コロナ禍からの金正恩氏の経済政策の影響が少なからずあるだろう。

1980年代までの北朝鮮では、すべての男性が何らかの職場に属し、そこを通じて食料品や生活必需品の配給を受け取るというシステムが機能していた。不平不満を言わず、普通に働いていれば、とりあえず生活には困らなかった。逆に「余計なこと」をすれば、たちまち生活が行き詰まってしまう。そうやって国民をコントロール下に置いていたのだ。

このようなシステムが「苦難の行軍」を前後して崩壊した。人々は生き抜くために、手持ちのものはもちろん、勤め先の備品、生産品を売り払って現金を得て、市場で食べ物を得るようになった。

当局は時には取り締まり、時には黙認した。そうやって30年が過ぎ、北朝鮮の市場経済化が進んだ。

しかし金正恩氏は、コロナ禍において国民に対する統制を強化したのをきっかけに、経済や社会を1980年代以前のそれに似たようなものに戻そうとしたようだ。

(参考記事:「商売する時間があれば働け」市場から女性労働力を奪う北朝鮮

それにより、多くの人が餓死するほどではなくとも、ギリギリの生活を強いられるような状況となってしまった。金正恩氏はアメとムチで政策を推し進めようとしているが、アメよりもムチが目立ち、多くの国民が激しい不満を抱いていると言われている。

時が経つにつれ、取り締まる側も生活に困るようになった。そんな両者の思惑の一致が生み出したのが、北朝鮮の「ゴールドラッシュ」と言えよう。