名前が「ジュエ」とされる金正恩氏の娘や李雪主(リソルチュ)夫人らは、見るからに高級そうな服を着て大衆の面前に現れる。高級幹部が贅沢三昧していることも、庶民は知っている。そこに加えて高級車となれば、庶民が反発するのは当然だろう。
(参考記事:金正恩が「フェラガモとグッチ」を大量注文…靴やトートバッグなど)しかし、下手に不満を口にすると、「マルパンドン」(言葉の反動、反政府的言動を行った分子)としてどんな目に遭わされるかわからない。気の置けない友人同士で、そんな不満を語り合うだけで、公的な場で議論されることは全く考えられない社会なのだ。
しかし身内だけになると、堰を切ったように不満が口をついて出る。
「目や耳を塞いだからと、見えないわけでも聞こえないわけでもない。われわれは何でも知っている。国民は耐乏生活を強いられるばかりで、武器を作り、他国に売ってそのカネでまた武器を作る。国防力強化や核兵器開発はいったい誰のためのものなのか分からない。今回の車のニュースを聞いて、まるで空腹の人々に肉を差し出し、『ほら、食べたいか』と嘲笑われているような気分になった」
「収入があって自給自足できるレベルであれば、ああ、そうかと思い、ここまで敏感に反応することはなかっただろう。今は耐えられないほど深刻な生活苦の中で生きているから、より敏感になるのだろう」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮は、余剰農産物、家内制手工業の製品などのごく限られたものを除き、市場での販売を禁止した。肥大化した市場の機能を縮小し、1980年代以前の農民市場(チャンマダン)に戻すことを目論んでいるようだ。
市場経済化の進展に伴い、物を言う中間層の出現を恐れているのかもしれないが、その意図は未だに明確でない。市場で様々な商品を販売して得た現金収入で生計を立てていた北朝鮮の人々は、苦しい生活を余儀なくされている。地方政府もカツカツの状態となり、飢えに苦しむ庶民を助ける余裕がない。
(参考記事:「年金を払うカネがない」金正恩の社会保障が崩壊状態)車の画像は公開されていないが、若者の間では、どんな車種で価格はいくらかという噂が立っている。