【北朝鮮国民インタビュー】深刻な少子化「苦労させるなら産まない方がマシ」

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国連人口基金(UNFPA)の世界人口白書によると、2022年の北朝鮮の合計特殊出生率(出産可能年齢の女性1人が生涯に産むと予想される子供の数の平均)は1.79だった。日本の1.3、韓国の0.78よりは高いものの、人口置換水準(人口が増えも減りもせず維持するのに必要な出生率)2.07には満たない。

金正恩総書記は、4日の全国母親大会での演説で、「全ての母親が子供を多く産んで育てるのがすなわち、愛国であることを明白に認識して積極的に立ち上がる時、われわれが目標とする社会主義強国建設偉業はそれだけ早められるであろう」と述べた。北朝鮮の少子化問題は以前から指摘されてきたが、今回初めて公式に認めた。

(参考記事:少子化と非婚化が深刻化する北朝鮮「結婚は刑務所行きも同然」

コロナ前から深刻だった北朝鮮の少子化だが、コロナ禍とそれ以降の経済的苦境で、結婚も出産もしないという若者が以前にもまして増えている。

韓国デイリーNKは、中国と国境を接する恵山(ヘサン)、会寧(フェリョン)、新義州(シニジュ)在住の30代住民とインタビューを行い、結婚、出産を取り巻く現状についてインタビューを行った。

【Aさん:恵山在住の女性・2019年結婚・子どもなし】

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「5人の友人のうち、3人は結婚はしたが子どもは産まず、2人は結婚そのものをしようとしない。もはや子どもを持つことを諦めている」

「食べるものがなく、ひいひい言いながら日々を暮らしているのに、出産や育児のことを考えるだけでも鳥肌が立つ」

「ときどきかわいい子どもを産んで育てたいと思うこともあるが、子どもに充分な食事を与えられず涙を流している知人を見ると、そんな思いは消え去る」

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市内のある人民班(町内会)ではコロナ前、ほぼ毎年1〜2人の子どもが生まれていたが、コロナ禍に入って今に至るまで、生まれた子どもは2人で、今年はゼロだという。

【Bさん:会寧在住の女性、未婚】

「以前は30歳を過ぎても結婚しないとあれこれ言われたが、皆が皆、大変な数年間を経験したからか認識が変わったのか、むしろ(結婚しない方が)賢明だと言われるようになった」

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「市場に出て懸命に働いて食べていけるなら、結婚を諦めることはないだろうが、そうしても貧しい生活から抜け出せず、一人で食べていくのも大変なので、結婚や出産は考えられない。子どもを産んで苦労させるくらいなら、産まないほうがまだマシだ」

【Cさん:新義州在住の男性、未婚】

「最近は子どもを抱いて歩く女性もめったに見かけなくなり、見かけたとしても『抱っこされたあの子は、これからどれだけ苦労して育つのだろうか』と思ってしまう。幹部やお金持ちの家でない限り、生まれた瞬間から苦しみの人生が始まることを知らない人はいないだろう」

「ありとあらゆる苦労をした若者は、子どもが自分と同じ苦労を経験をすることを望んでいない。だから子どもを産まないようにしている。ほとんどの人は、今の状況では子どもを育てる自信もないと言っている」

世界では、既に3分の2の国で人口が既に減少、または減少の兆しが現れている。それを手厚い予算配分、移民や産業の機械化で補うのが全世界的な趨勢だが、北朝鮮ではいずれも欠けている。そもそも北朝鮮の実情を知ってなお、移民したいと思う人がいるだろうか。

3人が語ったように経済的苦境が収まらない限り、少子化から抜け出すのは難しいだろう。しかし、北朝鮮政府のやることは弥縫策ばかりだ。

例えば、金正恩氏が母親大会の演説で言及した「嘆願」――つまり都市部の若者を誰も行きたがらない農村や炭鉱に、自ら望んだという形にして、労働力として送り込むプロジェクトが行われているが、現場からの離脱が相次ぐなど、様々なトラブルが起きている。

(参考記事:もはや「就職詐欺」というべき北朝鮮の嘆願事業

また、「避妊具を使うな」という子供だましの政策は、「産む産まないは女性の自己決定」とする女性の「リプロダクティブ・ライツ」(性と生殖に関する権利)を深刻に侵害し、危険を伴うヤミの妊娠中絶手術が横行している。

(参考記事:響き渡った女子中学生の悲鳴…北朝鮮「闇病院」での出来事

金正恩氏がいの一番にすべきことは、育児、教育環境の整備はもちろんだが、誰もが安心して商売ができる環境、誰もが豊かになれるチャンスが得られる環境を作ることだろう。

(参考記事:「避妊するな」金正恩命令でも進む少子化…首都・平壌も例外なく