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韓国の農村振興庁と農村経済研究院が発表した資料によると、北朝鮮のコメ、大豆、小麦、トウモロコシなどの穀物生産量は、2020年440万トン、2021年469万トン、2022年451万トン。年間の需要である575万トンからは、かなり遠い数字だ。

ところが、国の出した2023年の穀物生産量の目標は、なんと760万トンだ。このかけ離れた数字はいかにして出たのだろうか。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の幹部によると、昨年末に開かれた朝鮮労働党第8期第6回総会では、「穀物生産を決定的に高め、食糧問題をいかなる代償を払おうとも必ず解決すべき国家重大事」との認識が示された。そこで今年、無条件で達成すべき生産量として掲げられたのが、760万トンという数字だった。

また、内閣の農業省は、全国すべての農場に、コメは1ヘクタールあたり8トン以上、トウモロコシは10トン以上の収穫をあげよと指示した。そして、すべての農場で穀物生産の課題(ノルマ)を遂行することが、経済開発5カ年計画の達成にあたって最も重要な手段であることを自覚し、農場の幹部が非常の覚悟であらゆる手段と方法を動員して、穀物生産に臨むことを強いた。

農場幹部からはそんな指示に「とうてい無理だ」の大合唱が起きているが、農業省はどこ吹く風だ。

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「各農場は、充分な肥料や農薬、農機具など営農物資が円滑に供給されたとしても、農業省が示した穀物生産課題を遂行できるかどうかは不確実だと考えている。今のようにすべての物資が不足している状況で、課題の遂行はとうてい無理との意見が続出しているが、上級機関では無茶振りをしている」(情報筋)

具体的な指示の内容を見ると、コメは1ヘクタールあたり8トン、トウモロコシは10トン以上の収穫をあげよとしている。国際連合食糧農業機関(FAO)の2019年の統計では、1ヘクタールで8トン以上のコメの収穫があったのは、117カ国中オーストラリア、タジキスタン、米国など6カ国に過ぎない。営農資材、農業機械、技術が整っている国でも、1ヘクタール8トンはかなり厳しい目標と言える。

ちなみに中国は7トン、韓国は6.9トン、日本は6.8トンだ。そして北朝鮮は6トンとなっているが、虚偽報告がはびこる現状を考えると、実際はもっと少ない可能性がある。

(参考記事:凶作続きの北朝鮮農業、打開策は「ホラ防止法」

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農業省の下した課題はそれにとどまらない。すべての農場に野菜栽培のための温室(ビニールハウス)を今年中に建てて、北朝鮮が独自開発した蛋白草などの野菜、キノコなどを栽培するよう指示したのだ。霜を防ぐためのビニール膜ですら輸入に頼り、それが手に入らないのが現状である。それなのに温室建設というあまりに無茶な指示に、農場の幹部はどこから手を付けていいのかわからず、途方に暮れてため息をつくばかりだという。

農業省から同様の指示が下されたと伝えた咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、農場幹部が、営農資材の不足でノルマ未達成は火を見るよりも明らかなのに、それによる追及をどう切り抜けるか、農繁期に入る前から悩んでいると伝えた。

凶作の原因が現場にないことは明らかだが、誰かが責任を取らせなければことが済まないのが北朝鮮だ。それで現場の幹部が次々に犠牲になっていくが、そんなことで豊作になるわけがない。

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(参考記事:金正恩「34人を大量粛清」農業不振と食糧難で

農場員も、肥料などの営農資材を国が供給してくれず、相次ぐ自然災害やコロナ禍で何年も凶作が続いていることを知っているはずなのに、「コメで社会主義と革命を保衛しよう」「農場幹部と農場員は一心同体となり、一掴みの肥やしになる覚悟で穀物生産を増やせ」などと、虚しいスローガンや目標を繰り返すばかりで、増産を迫る国に対する不満をあらわにする人もいるとのことだ。

北朝鮮の例年の凶作は、一切の輸入をストップさせるという現状を無視した国の失政と、農業システムが抱える構造的な問題に起因している。前者を解決すれば、多少の改善は見込めるが、食糧を自給できるほどの収穫量を得るのは極めて困難だ。

(参考記事:毎年凶作の北朝鮮農業、何が問題なのか?