「ぜったい入居したくない」北朝鮮国民が”金正恩住宅”を酷評

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質よりもスピードを重要視する「速度戦」の弊害がまた現れた。

北朝鮮の首都・平壌では現在、金正恩総書記が打ち出したメガプロジェクト「平壌市1万世帯住宅」と「普通江川岸段々式住宅区」が進められている。安全装備もまともな食事も与えられず、長時間労働に追いやられた労働者が、事故で死亡する事例が相次いでいるが、問題はそれだけではない。

工事は今年3月に始まったばかりなのに、今年10月10日の朝鮮労働党創立日までに住民を入居させるという無茶苦茶な計画――いわゆる「速度戦」で工事が進められた結果、建物で欠陥が相次いで発見されたというのだ。

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デイリーNK内部情報筋は、建設指揮部が先月16日から施工検収(建築確認)を行ったが、松新(ソンシン)地区のマンション3棟で欠陥が発見され不合格となり、改めて大々的な施工検閲(検査)が始まったと伝えた。

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具体的には、欠陥が見つかったのは軍官学校(士官学校)、軍事大学の教職員、学生が建設を請け負った箇所だという。電気の配線や上下水道管が設計図通りになっておらず、鉄管を使うべきところを塩ビパイプで代用するなど、国家設計指標に定められた通りの資材を使っていなかった。専門の施工参謀と設計者が毎日、毎週、毎月と検査を行ったにもかかわらず、欠陥が発見できなかった。

慣れていない人員を現場に投入したことと、コロナ鎖国により資材が不足しているのに、工期に間に合わせるために、無茶な工事の進め方をしたことが原因だった。現場の建設常務責任者は「むやみやたらに仕事を投げてきたのでどうしようもなかった」などと状況を正しく説明したが、これが問題視されているとのことだ。

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さらには、平壌市内に存在する特定地域に対する差別感情も作用したようだ。

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「松新は(市内中心部から離れた)周辺区域にあり、『ケマウル』(ひどい地域、スラム)と呼ばれ、電気が供給されないことで有名な地域だ。だから建設現場では、国家設計指標通りの資材を使う必要がないとみなしたようだ」(情報筋)

平壌は「30号対象」と呼ばれる市内中心部6区域と、「410号対象」と呼ばれる郊外の12の区域と2つの郡に分けられ、後者は配給など生活面でも差別待遇を受けている。松新は言うまでもなく、後者に属する。

問題発覚を受けて現地住民の間からは、「速度戦には大規模補修がつきものだ」「アレ(1万世帯住宅)には絶対に入居しないほうがいい」「墓場になるかもしれない」などの反応が出ているという。

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建設指揮部は、大々的な補修を命じるとともに、地域の建設行政、政治、技術責任者を呼びつけ、「思想観点がなっていない」と厳しく叱責した。顔に泥を塗られた形となった国防省も「平壌市住宅建設事業に人民軍を総動員したのは、党と人民に限りなく忠実である人民軍将兵の良心を信じる」からだという教養事業(思想教育)を始め、「今回の事故は厳重な問題」だとして責任者を処罰する方針だという。

今回問題となったのは松新地区の3棟だけだったが、プロジェクトは松新地区を含め松花(ソンファ)、西浦(ソポ)、金泉(クムチョン)、9・9節通りの5つの地区に2025年までに毎年1万世帯ずつ、全体では7万世帯に及ぶ。

質よりも工期を重要視する速度戦にこだわり続け、資材不足、労働者への補給不足など根本的な問題が解決しないままで、実績作りのために計画を推し進めれば、とても住めない廃墟群を作り出すだけだろう。

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