「こんな死に方は悔しい」北朝鮮軍で死者続出…金正恩が緊急指令

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北朝鮮の金正恩総書記は、武力総司令官の名義で、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍団、司令部の指揮部などの拠点に、保養所を設置する指示を下した。保養所と言っても、レジャー施設ではない。栄養失調者を収容する施設だ。

朝鮮人民軍内部のデイリーNK情報筋によると、今回の指示の発端となったのは、国防省後方局と軍医局が合同で出した報告書だ。1期戦闘政治訓練(冬季訓練)の期間中、軍全体の部隊を対象に行なった栄養失調の実態調査に基づいて作成された。

栄養状態が悪く、訓練から落伍する兵士が少なくないと指摘した報告書は、保養所の開設を提案している。北朝鮮では久しく前から、軍の食糧が輸送過程での横流しや横領で目減りし、末端の兵士に充分な量が届かない問題が存在する。それに加え、コロナ鎖国で営農資材や肥料が輸入できなくなり、収穫量そのものが減って、食糧難がより深刻化したことが原因だ。

これにより、部隊内での餓死も続出している。

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たとえば、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えたところでは、昨年5月には道内の三水(サムス)郡に駐屯する朝鮮人民軍42旅団で、兵士5人が栄養失調で死亡した。部隊の中からは「戦争で死ぬなら悔しくないが、栄養失調で死ぬのは悔しい」「これが栄誉ある軍の服務なのか」などの不満が噴出したという。

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報告書を深刻に受け止めた金正恩氏の指示により、軍の現場では今月11日から後方支援の準備、保証、供給システム、保養所の仮の建物の指定などの準備作業が行われ、選ばれた兵士が入所しつつあるとのことだ。

保養所の所長は、各部隊の政治委員が兼任することになったが、これは「人民軍はよく食べてこそ国を守ることができる、司令部指揮部ごとに党委員会、政治部が責任を持ってこれ(栄養失調)を退治すべきだ」との金正恩氏のマルスム(お言葉)に基づいた措置だ。

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また、栄養失調が治ったあとでも、区分隊(大隊)の政治部が、彼らの軍での生活まで責任を持って面倒を見なければならないというのが、金正恩氏の指示の核心だ。

頭を抱えているのは所長となった政治委員たちだ。保養所に入った兵士に食べさせる食糧を確保しなければならないからだ。少なくない政治委員が自宅で家族が飼育している兎、山羊、豚、鶏を保養所に提供しているという。つまり、自腹を切っているということだ。ここでも国から指示だけ下され、予算が支給されない「自力更生」が貫徹されている。

夫が仕事を押し付けられたせいで、苦労させられている家族たちは「栄養失調退治事業は、結局われわれに丸投げされたも同然」「(軍人に対しては)商売も禁止しているくせに、ようやく育てた家畜を保養事業に捧げろとはどう(生活)しろということなのか」などと、不満たらたらだ。

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軍関係者は商行為が禁止されており、密かに商売をしようにも基地は山奥にあることが多く、村の市場で商売をしたところで大した儲けにならない。夫の薄給を穴埋めするために、妻が自宅で育てた家畜をすべて取られてしまっては、彼らの方が栄養失調にかかりかねない。

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不満を抑え込むために軍当局が行なったのは、プレッシャーをかけることだ。10月10日の朝鮮労働党の創立記念日に、「部隊内栄養失調軍人退治事業総和(総括)」を行い、成績に応じて等級を分ける。つまり、実施の事業評価を行い、点数が悪ければそれなりの不利益を与えるというのだから、大慌てになるのも当然だろう。

既に処罰された部隊もある。栄養失調部隊別後方総和報告書で、最も低い評価を受けた第1、第2、第5軍団と一部の訓練所、後方部司令官、後方部責任イルクン(幹部)が、連隊責任を取らされ、解任されたとのことだ。