北朝鮮の女子高生、権力者との「対決」制し未来を勝ち取る

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北朝鮮は、他の旧共産圏同様に、労働意欲や体制の安定性を高めるために、国民に対して様々な称号を与える。中でも広く知られているのは「労力英雄」だろう。国の経済計画や増産キャンペーンで割り当てられたノルマを超過達成した者に与えられるもので、メダルとともに、第1級国家勲章、最高人民会議常任委員会の英雄証書が授与され、将来が約束される。

しかし、地位も未来もカネで買える今の北朝鮮では、一部の称号もカネ儲けの手段と化している。一例を挙げると、模範的な子どもに与えられる「金日成・金正日栄誉賞」は、以前から親がワイロを払って子どもに授与させる不正行為が横行し、その相場は数千ドルに達する。

(参考記事:「子どもの将来」もカネで売買される北朝鮮の拝金主義

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が今回伝えたのは、そんな称号のひとつ、「7.15最優秀賞」をめぐるエピソードだ。

この賞は、金正日総書記に対する青少年の忠誠心と学習意欲を同時に高めることを目的に、1987年7月15日に設けられたもの。毎年、全国の高級中学校(高校)の卒業を控えた生徒の中から、成績優秀な者を選んで試験を受けさせた上で、その成績に応じて与えられる。

受賞者は、大学入学のフリーパスが得られるだけではなく、自分はもちろん家族の将来も約束される。誰もが羨むものだが、それだけに超難関だ。

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今年の受賞者を決める試験は、2月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)に行われ、同月中旬に授与式が行われた。咸鏡北道の会寧(フェリョン)でたったひとりの受賞者となったのは、農村の貧乏な家の出の女子高生Aさんだった。しかし、受賞までの道は平坦ではなかった。

実は彼女、道党(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)の複数の幹部から、脅迫混じりに替え玉受験の要求を受けていたのだ。

「同じ試験を受けたうちの娘の試験用紙と、君の試験用紙を取り替えてくれ」

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ある幹部は娘に賞を与えるため、内閣の教育省から来た試験監督官を食事でもてなし、学校の教員に対しても様々な手を使ったが、Aさんが試験で優秀な点数を取ったことを知り、替え玉受験に応じるようAさんに対して懐柔を試みた。

「お前が医大に入りたいのなら、私が金を払って入学させてやるから、賞はうちの娘に譲ってくれ」

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しかし、Aさんは頑として受け付けなかった。幹部は脅迫に出たが、それでも一向に動じないAさん。結局、賞はAさんが勝ち取った。

幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)は大学生を家庭教師として雇い、子どもに勉強を教えさせるが、市内でも極貧層に属する農家の出のAさんは学校の授業以外の教育は受けられなかった。それにもかかわらず、咸鏡北道で行われた学習競演で1等賞を取るなど、秀才として名が知れ渡っていた。

(参考記事:違法「カテキョ」で北朝鮮公教育が崩壊のピンチ…カリスマ講師も登場

今回も試験会場に行く交通費すらなかったが、担任教師の支援を受けて試験を受け、7.15最優秀賞の受賞に至った。また、第一志望の医大への入学がかない、奨学金まで受け取れることとなった。彼女の出身校は「わが校の誇り」だと広く紹介している。

カネとコネで物事が決まる拝金主義、縁故主義の社会になってしまった北朝鮮で、彼女のサクセスストーリーは、一服の清涼剤のようだ。

ただ、教授へのワイロなど色々と物入りなのが北朝鮮の大学の実態だ。家からの経済的援助が得られない彼女は、当初から大学進学を目指す生徒の家庭教師のバイトをしながら、様々な費用を稼ぐという計画を立てていると、情報筋は伝えた。一度ははねのけたカネとコネに頼らなければ、学業を続けられないという皮肉な未来が彼女を待ち受けているのだ。