韓国国防省は6月22日、国会国防委員会に対し、北朝鮮軍が朝鮮労働党創立75周年(10月10日)を記念する閲兵式(軍事パレード)の準備活動を続けていると報告した。
報告によれば、軍事パレードに参加する兵力と装備が集結する平壌の美林(ミリン)飛行場一帯で、装備保管用施設(装備庫)新設や金日成広場の補修などが行われているという。聯合ニュースはこれを受け、「パレードには大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの戦略兵器が登場する可能性が高そうだ」との分析を伝えている。
感染で部隊がマヒ
そして、北朝鮮軍のデイリーNK内部情報筋によれば、パレードに参加する人員は今日(20日)にも平壌に集結する見込みだという。その根拠は、参加人員の衣食住をサポートする支援チームの動向だ。
情報筋は「人民武力省第1通信接続所、海軍司令部第2無線接続所、空軍・反航空軍司令部通信大隊の女性兵士ら計約200人が配食チームに選抜され、これを中心とする支援チームの人員らが13日、美林飛行場近くの4.25旅館に集結した」と話す。こうした動きは通常、パレードに参加する兵員集結の1週間前に見られるのだという。
北朝鮮と金正恩党委員長にとって、党創立75周年は最高指導者と体制の権威を示す上できわめて重要な節目だ。特に、米国との関係改善が暗礁に乗り上げている状況を考えれば、パレードで戦略兵器を並べ、「核の威力」を誇示するパフォーマンスは必須と言えるかもしれない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかしそのために、金正恩氏は極めてリスクの高い冒険に出ることになる。北朝鮮は今なお、国内での新型コロナウイルス感染者はゼロであるとしているが、それを額面通り受け取る向きは皆無に等しい。
同国内から漏れ伝わる非公式情報では、感染が疑われる人々の死亡事例が相次いでいる。とくに郡内の様子は深刻で、今年1~2月、中国と国境を接する平安北道(ピョンアンブクト)などに駐屯する国境警備隊では新型コロナウイルスと思しき症状で180人が死亡。3~4月には、一部の部隊で組織が機能しないほどの状況に陥ったとされる。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面末端兵士の栄養失調がダメージに拍車をかけていると思われるが、パレードに参加する万人単位の人員の中にも、そうしたリスクを抱えた兵士は少なくないはずだ。
北朝鮮当局も、パレードでの防疫対策には全力を挙げるだろう。それでも、これがきっかけとなり、首都・平壌で「大量感染」が起きるリスクは決して小さくない。感染が広がったら最後、医療インフラの脆弱な北朝鮮になすすべはないだろう。
防疫対策に力を入れようと、パレードの実施を見送った方がはるかに安全なのは明らかなのだ。