「もう核を作らなくて済む」発言の軍高官を銃殺した金正恩氏

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さらに燃料1トン、コメ580キロ、トウモロコシ750キロを西海衛星発射場で勤務する軍官やその家族に配給するよう指示したが、これが「党の唯一領導体系確立の10大原則」に反する反党行為とみなされた。

この報告を受けた金正恩党委員長は激怒し「個人偶像化の恐ろしい思想毒素が人民軍の高官を変質させている、変質した思想毒素は根絶やしにしなければならない」と述べ、銃殺を命じたと、情報筋は伝えてきた――と、このように説明しても、読者の多くは金正恩氏が果たして何に激怒したのか理解できないのではないだろうか。

「党の唯一領導体系確立の10大原則」(現在はとは、北朝鮮の全国民が最高指導者(現在は金正恩氏)の権威を絶対化し、無条件服従することを定めた行動規範で、憲法よりも上位にある。

その条文は抽象的で様々な解釈が可能なのだが、ヒョン・ジュソン氏のケースで言えば、要はこの国では最高指導者以外に、部下やその家族への配給を命じる資格はないということだ。そのためヒョン・ジュソン氏は、最高指導者の権威に挑戦しようとした不届きなヤツ、ということになるわけだ。

米国務省はどういった理由から、ヒョン・ジュソン氏の公開処刑を問題視したのだろうか。いくら北朝鮮での最高規範であるといっても、「党の唯一領導体系確立の10大原則」は法律ではなく、これに基づく断罪と処刑は超法規的な殺人と見なされざるを得ない。

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そして、それを米国政府が問題視したことはつまり、このような形で維持されてきた金正恩氏の権威の、反社会性を指摘したも同然と言えなくもない。一時は蜜月に見えた金正恩氏とトランプ米大統領の関係も、今ではすっかり冷めているように見える。しかしそもそも、金正恩氏の最高指導者としての正当性は、米国が受け入れられるものではないということだ。