文在寅の「英断」も金正恩は「無視」か…韓国スルーを徹底

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かつて南北の経済協力事業として行われていた北朝鮮の金剛山観光。韓国の現代グループが巨額の資金を投資して、ホテルなどの施設を建設、韓国からのツアーを2003年9月に開始したが、2008年7月に韓国人観光客が朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士に射殺される事件が起こったことを受け、事業は中断している。

(参考記事:北朝鮮国民「金剛山射殺事件に衝撃」

韓国の文在寅大統領は14日の新年の記者会見で、「(金剛山への)個別の観光は国際的な制裁に抵触しない」と述べた。また、康京和外相も、米韓外相会談の後で「南北間の重要な合意があり、その中には制裁の問題にならない部分もあり、例外を認めてもらった上でできる事業もある」と述べるなど、金剛山観光の再開に向けた意思を示した。

これを巡り、青瓦台(韓国大統領府)は米国のハリス駐韓大使と舌戦を繰り広げるなど、米韓の歩調は完全に一致していると言い難い状況だ。それにもかかわらずこのような言動を見せるのは、文在寅氏としてはかなりの英断を下したつもりだろう。

しかし、北朝鮮の金正恩党委員長は昨年、金剛山(クムガンサン)観光地区を現地指導し、現代グループが建てた施設を「被災地の仮設テントや隔離病棟のよう」とこき下ろし、「容易く観光地を明け渡して何もせず利を得ようとした先任者らの間違った政策」などと金剛山観光事業そのものを批判した上で、施設を撤去し、建て直すよう命じた。

(参考記事:「南は資格を喪失した」北朝鮮、金剛山観光で韓国に通告

さらに、北朝鮮当局は最近、新しい施設の建設のために中国からの投資を募っていると、デイリーNKとの連絡を取っている平壌の高官が述べた。

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(参考記事:だから文在寅は「無視」される…北朝鮮が理由を解説

この高官は、中国に対して金剛山に投資してほしいと投資を積極的に募っていて、かなりの高官までも誘致プロジェクトに参加していると明らかにした。

「かなり破格の条件で勧誘している」(高官)というが、今のところ手を上げた企業はいない模様だ。この高官が、中国企業が北朝鮮投資を尻込みする理由として挙げたのは、「楊斌(ヤン・ビン)事件」だ。

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オランダ国籍の華僑の楊斌氏は、花卉(かき)ビジネスで財を成し、2002年9月には北朝鮮が新設した経済特区、新義州特別行政区の行政長官に任命された。しかし、本格始動を前にして中国当局は彼を脱税容疑などで逮捕、裁判で懲役18年の判決を下した。プロジェクトはストップし、開発が予定されていた地域は野ざらしになっている。

(参考記事:【写真レポート】田植え戦闘真っ盛りの北朝鮮経済特区「黄金坪」

つまり、彼のように中国政府の承認や支援を得ないままで北朝鮮への投資を進めれば、政治的な理由でストップさせられ、大損しかねないということだ。

「今のところ、中国政府は北朝鮮の金剛山開発への投資にこれといった立場表明を行っていない。そのため、中国の投資者も積極的に出られない」(高官)

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北朝鮮当局は、自国内で携帯電話事業を行っているエジプトのオラスコム社のように、外国企業との合弁事業で金剛山の開発を進めることを検討していると、この高官は伝えた。

「うまくやれば大儲けできると考える(中国)企業もかなりある」(高官)とのことだが、中国政府は、制裁履行のために、自国企業が北朝鮮で合弁企業、ジョイントベンチャー、現地法人を新設、増資することを禁じる措置を取っており、国際社会から批判されかねない対北朝鮮投資を承認、後押しする可能性は少ないと思われる。

(参考記事:中国、北朝鮮との合弁企業設立や増資を禁止

オラスコム社は、制裁への抵触のリスク以外にも、利益が国外に持ち出せない問題を抱えているが、2018年は平壌で建設中の柳京ホテルのLED照明に投資したと、米国の北朝鮮専門ニュースサイトが報じるなど、北朝鮮投資を継続している。

一方で、最も頼りになる韓国企業は、対象から完全に排除されており、「金剛山と関連して南朝鮮(韓国)の話が出ることは全くない」(高官)とのことだ。

ただし、金正恩氏が命じた、韓国側が建設にした施設の撤去についてこの高官は「(南北)関係がさらに悪化する状況となれば、当局が即時撤去を命令しうるが、国際社会がその責任を南側(韓国)に負わせるようにするために、施設の撤去を何度も通告するだろう」「当分の間、南側に施設撤去(の要求)を続け、プレッシャーを掛けるだろう」と述べた。