北朝鮮社会の基準で言えば、1号資材を盗むなどとんでもない行為で、部隊全体が連帯責任を取らされてもおかしくないはずだ。実際、軍内部では隊の兵士に責任を取らせようとする雰囲気だったという。
(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命)ところが、今回の事件を報告を受けた金正恩氏は「1号資材よりも兵士の命が大切だ」との指示を出してしまったため、責任の所在が不明確となってしまったのだ。つまり、死んだ兵士の所属部隊に責任を取らせることは、金正恩氏の指示に背くことになる。
結局、「8総局の兵士は任務をまっとうするために行った行動で、地方部隊の兵士は1号資材に手を出そうとしたため命を落とした」(情報筋)ということで、死んだ兵士に全責任を問い、誰も責任を取ることなく事件が集結する可能性が高いと情報筋は見ている。
このような事例は他にもある。軍需工場で大量の不良品が発生した責任を、生きている人ではなく、すでに病死した係官になすりつけ、「剖棺斬屍」(墓を暴いて処刑する)を行い、生きている人に累が及ばないようにしたというものだ。これが、重罰と処刑を連発する北朝鮮なりの「人を生かす」方法なのだ。
(参考記事:「死人を処刑」して生きている人を救う北朝鮮の独特な人命尊重)