やがてAさんは倒れてしまった。しかし、現場には医療施設は存在しない。上役は「面倒を見る人もおらず、治療も保障されないので、家に帰れ」と命令した。家までの交通費は自己負担だ。
高熱にうなされながら恵山駅に到着したAさんは、駅のそばの旅館に転がり込んだが、その日の夜に息を引き取ったという。遺族は賠償金も何も得られないだろう。
三池淵の現場では、工事を一刻も早く完成させるために、極めてひどい環境のなかで無理な仕事をさせていることで、現場から逃げてしまう人が続出し、逆に工事が遅れる結果を生んでいる。