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北朝鮮は、国連で13年連続で採択されている北朝鮮人権決議案に対して「政治的挑発」「『人権問題』を口実に不純な政治目的を追求しようとするいかなる試みに対しても、絶対に袖手傍観しない」などと強く反発している。

それでも、国際社会は黙っていない。米国では上院外交委員会が、北朝鮮の政治犯収容所の撤廃を求める決議案を通過させた。

(参考記事:北朝鮮女性、性的被害の生々しい証言「ひと月に5~6回も襲われた」

一方、米国務省は広報サイト「シェア・アメリカ」で、10月27日の世界信教の自由の日に合わせて、北朝鮮で宗教が迫害されているという内容の脱北者の証言動画(下)を公開した。証言したのは脱北者のチ・ヒョナさんだ。

証言内容は次のようなものだ。

「脱北を4回試みたが、3回失敗して強制送還された。中国で人身売買されたが、『混血の子どもの出産は認めない』との理由で警察に強制堕胎させられた。机の上に寝かされ、自分の着ていた服でさるぐつわを噛まされ、両手両足を抑え込まれた上で、麻酔なしに堕胎手術を受けさせられた」

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「(1990年代後半の)苦難の行軍のころに、うちの家族も餓死の危機に追いやられた。母はコメを得るために中国に渡った。中朝国境地域にある朝鮮族教会に米国と韓国の宣教師が託していたコメをもらったが、同時に縦8センチX横5センチの小さな聖書をもらってきた。それをきっかけに神の存在を知ることとなった」

「その後、保衛部(秘密警察)に呼び出された。聖書を奪われた上で5時間にわたり拷問された」

(参考記事:「北朝鮮で自殺誘導目的の性拷問を受けた」米人権運動家

北朝鮮は、米国と韓国が非核化を優先して人権問題に言及しなくなったのをいいことに、このまま「普通の国」の仲間入りを狙っているのかもしれないが、そうは問屋が卸さない。人権侵害の証拠は数多く残っており、それをなくしてしまうことなどできないのだ。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

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2013年に脱北過程を綴った本「自由を求めて千万里」を出したチさんは、昨年12月にニューヨークの国連本部で開かれた「北朝鮮人権の日」、今年7月の「信教の自由向上のための閣僚級会議」などで証言するなど、北朝鮮の人権問題を全世界に知らせる活動に取り組んでいる。

米国は、クリントン大統領(当時)が1998年、世界信教の自由法に署名した10月27日を「世界信教の自由の日」としている。一方で北朝鮮は宗教、特にキリスト教に対して厳しい弾圧を加えていて、聖書を持っていたとの理由だけで拷問、収容所送りなどの厳罰に処している。

(参考記事:聖書の所持だけで「この世の地獄」へ…北朝鮮の恐るべき宗教弾圧

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シェアアメリカは今年5月、脱北者のチ・ソンホ氏、チョン・グァンイル氏が北朝鮮で受けた人権侵害について語る動画も公開している。

 

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記