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北朝鮮で、生活苦に耐えかねて電気の変圧器を盗もうとしていた父子が、悲しい運命を辿る出来事があった。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、事件が起きたのは先月中旬のこと。道内の穏城(オンソン)の村に住んでいた40代男性は、日雇いの仕事で糊口をしのいでいたが、しばらくの間仕事にあぶれ、丸一日何も食べられない状況に陥った。

そんなある日の夜のこと。男性と中学校3年生の息子は、村人が寝静まった真夜中に村外れにある電柱によじ登り、変圧器を盗もうとした。

デイリーNKジャパンは以前、牛を盗んで屠殺して食べた人が銃殺されたことを伝えたが、牛と同様に変圧器などの電力設備は国有財産で、窃盗は重罪だ。父子はそれを知りながらもひもじさのあまり、変圧器に手を出そうとしたのだろう。

(参考記事:北朝鮮では「牛肉を食べたら銃殺」だった

ところが、ちょうどそこに村人が通りかかった。大騒ぎして人民班長(町内会の会長)など他の村人を引き連れて現場に戻り、父子を電柱から引きずり降ろそうとした。激しく抵抗されたのだろうか、村人は父子に殴る蹴るの暴行を加えた。

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この村には送電設備はあるものの、電気はほとんど供給されていなかった。数十年来続く北朝鮮の電力難は、ようやく改善の兆しが現れだしたが、この村はその恩恵に預かっていなかったようだ。

(参考記事:北朝鮮の深刻な電力難、中国の支援で緩和か

それに対する不満に加え、送電設備が壊されたり盗まれたりすれば、復旧費用は村人の負担となる。こうした様々な事情が重なり、暴力へと発展したのだ。

村人は暗闇の中、引きずり降ろされた2人の顔をまじまじと見てようやく、同じ村に住む父子であることに気づいた。息子は、すでに虫の息だった。大急ぎで病院に搬送したものの、病院に着いたときには息を引き取った後だった。

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郡の保安署(警察署)は事件の調査を行っているが、村人に罪は問わない方針だ。

村人は容疑者の40代男性について、保安署長に善処を求めている。村の仕事を手伝うなど普段は誠実な人柄で、息子を失ってしまうとは、あまりに気の毒だという理由からだ。

このように犯罪者を地域住民がリンチして死に至らしめる現象は、北朝鮮特有のものではなく、警察機構が腐敗して頼りにならない国で広範に見られるものだ。その一方で、北朝鮮は体制を維持するための保衛部(秘密警察)の組織の維持に関しては注力している。

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そんないびつな体制が、今回の悲劇を生んだと言っても過言ではないだろう。