「北朝鮮国民に対する人権弾圧の主犯として、米国政府の制裁対象となった金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長と金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長兼統一戦線部長が、制裁を猶予される形で平昌冬季五輪に参加した後、南北首脳会談など国際舞台に引き続き出てくることも理解できないことだ」(スカラチュー氏)
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)金与正氏と金英哲氏を受け入れているのは韓国政府であり、スカラチュー氏のこの言葉は暗に韓国を批判したものだと言える。
「北朝鮮が21世紀の国際社会に参加するためには、人権犯罪の温床である政治犯収容所を運用してはならない」(同)
一方、米国ニューヨークに本部を置く国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのジョン・シフトン(John Sifton)アジア局長はRFAに対し、北朝鮮の核問題を巡って多国間協議が行われるなら、その場では北朝鮮の人権問題を必ず取り上げなければならないと強調している。
「北朝鮮が介入して作成された南北首脳会談の宣言文に、北朝鮮の人権問題が全く取り上げられていないことは驚きに値しない。しかし国際社会は今後、核問題解決のため米国、韓国、日本、欧州連合などの多国間協議で、必ず北朝鮮の人権問題を議論する必要がある」(シフトン氏)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面同氏はまた、米国と国連の対北朝鮮制裁は、たとえ核問題が解決されても、人権状況の改善なしに解除されることはないという点を、北朝鮮との対話で明らかにしなければならないと指摘した。
北朝鮮の人権侵害を巡っては、金正恩氏が直接的な加害者になったであろうと思われるケースがいくつもある。だからこそ、北朝鮮は人権問題を議題にすまいと必死なのだろうが、そう簡単に、彼らの思惑通りことが運ぶこともないだろう。
(参考記事:金正恩氏「美貌の妻」の「元カレ写真」で殺された北朝鮮の芸術家たち)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。