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しかし、計画は初めの段階から躓いた。建築資材、労働力、それを裏付けする資金が全くなかったのだ。頼りになるのは北朝鮮お得意の速度戦と自力更生精神だけだった。金正恩氏の側近の間からも「10万戸建設は無理ではないか、平壌を中心に最初は4万戸、金正日氏が亡くなった後に2万戸を建設する」との声があがるほどだった。

2011年、平壌市平川(ピョンチョン)区域鞍山(アンサン)1洞で23階建て92戸のマンション建設が始まった。工事を請け負ったのは、人民保安部(現人民保安省)の7総局。15万人の人員が所属する、北朝鮮最大の国営ゼネコンだ。

資金を提供したのはトンジュ(金主、新興富裕層)で、李という名の40代女性だった。夫は国家安全保衛部(秘密警察、現国家保衛省)の部門長で、その威光を背景に様々な利権に介入し、大儲けしてきた人物だ。その利益を平壌市内の建設事業に投資したということだ。