幸い対話によって衝突は回避されたが、この時の経験を踏まえて、米韓軍の間で有事の際に北朝鮮の指導部を排除する「斬首作戦」が取り沙汰されるようになった。
2016年末の時点で韓国の国家情報院(国情院)は、「金正恩党委員長は、身辺に危険が及ぶのではないかという不安感から、行事の日程や場所を急に変更したり、爆発物、毒物探知装置を海外から取り寄せて警護を大幅に強化したりしている」と分析していた。金正恩氏は従来から、普通のトイレを使えないなど行動の制約が多いとされるが、そのうえ警護が強化され、相当なストレスをためたことだろう。
とはいえ、金正恩氏は米国を恐れてばかりいたわけではない。2017年の公開活動のうち軍関連は41回で、これまでのどの年よりも多かった。割合で見ると43%で初めて40%を超えた。
また金正恩党委員長は、重要な弾道ミサイル試射の現場には必ず自ら立ち会っている。これは、北朝鮮のミサイル発射の動向を常時監視する米軍の偵察衛星に、自らの姿をさらしているということだ。ステルス戦闘機などで襲撃されたら、殺されてしまう可能性が高い。