韓国のNGO・北韓戦略センターの姜哲煥(カン・チョラン)代表は10日、金正恩党委員長の叔父で国防委員会副委員長だった張成沢(チャン・ソンテク)氏の処刑と関連し、党の幹部約415人、傘下機関の幹部約300人、人民保安省幹部約200人が公開銃殺されたと証言した。聯合ニュースが伝えた。
人体をミンチに
姜氏は自身も脱北者で、朝鮮日報記者として活動した経歴がある。
姜氏は聯合ニュースに対し、処刑された幹部の中には故金日成主席が率いた抗日パルチザンの同志の一族も含まれたとした上で、「家族や親戚らが収容所に連行されるなど、張氏の処刑により少なくとも2万人が粛清された」と説明した。
張氏の処刑と前後し、ポルノ撮影の疑いをかけられた芸術家9人が公開銃殺されるなど、「血の粛清」の嵐が吹き荒れていたことは知られていたが、これほどの規模にまで及んでいたとは想像もつかなかった。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)姜氏によると、こうした内容は昨年7月に韓国に亡命したテ・ヨンホ元駐英北朝鮮公使をはじめ、近年に亡命した北朝鮮の元高官6人の証言から把握された。来週、オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に関連資料を提出し、捜査を促すという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面張氏は2013年12月12日、国家安全保衛部(現国家保衛省)の特別軍事裁判で、「現代版宗派の頭目として長期間にわたって不純勢力を糾合し、分派を形成して我が党と国家の最高の権力を簒(さん)奪する野望の下であらゆる謀略と卑劣な手口で国家転覆陰謀の極悪な犯罪を働いた」と指弾され、死刑判決を受けた。北朝鮮メディアによれば、判決は即時、執行されたという。
張氏の処刑に先立ち、張氏の側近だった李龍河(リ・リョンハ)党行政部第1副部長と張秀吉(チャン・スギル)同副部長が衆目の中、公開銃殺されたと伝えられている。しかし、約1000人もの人々が処刑されたとの話は、これまで出ていなかった。
李氏らは大口径の高射銃で、文字通り人体を「ミンチ」にされて殺されたというが、1000人もの人々はどのようにして殺されたのだろうか。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面姜氏は「被害者の規模に関する証言が少し食い違う部分はあるが、張氏に対する判決の内容が捏造されたという点、集団虐殺があったという点、家族が収容所に送られたという点についての証言は共通している」と述べている。
まずは、より詳細な情報が出てくるのを待ちたい。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。