北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は24日付の論説で、「帝国主義の思想的・文化的浸透」を徹底的に防ぐことが「政治・思想基盤をいっそう強固にするうえで極めて重要な問題」であると強調。米韓の宣伝戦や、韓流ドラマをはじめとする海外情報の流入に警戒感を示した。
金正恩体制は、これまでにも海外情報の流入を厳しく取り締まって来た。ハリウッド映画や韓流ドラマをこっそり見ただけの女子大生や高校生を、拷問したり公開裁判にかけたりしており、ひどい場合には銃殺刑にしている。
「正恩チョイス」のメニュー?
しかし果たして、金正恩党委員長や高位幹部たちは、海外の映画やドラマを見ていないのだろうか。絶対にそんなことはなかろう。美貌の李雪主(リ・ソルチュ)夫人のファッションひとつ取っても、外国の影響を受けていることを強く感じさせる。
さらに、この夏にはこんなこともあった。首都・平壌では8月、同国初となる「ビール祭り」が行われたのだが、主催した朝鮮人民服務総局の局長はオープニングセレモニーで「このビール祭りは、金正恩党委員長が発起し、詳細まで指示した」と述べていた。
面白いのは、会場でビールとともに売られた「おつまみ」メニューだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面このイベントには、乾き物、枝豆、プレッツェル、羊の串焼きなど様々なおつまみが用意されたが、中国メディアによると一番人気は「フライドチキン」だった。
ここで気付いた読者もいるかもしれないが、フライドチキンと言えば、韓国で定番中の定番のビールのおつまみだ。ギャロップコリアが2014年に行った「韓国人の好きなおつまみ」という調査で、フライドチキンは2位に入った。(1位はサムギョプサル、3位はスルメ)
つまり、「韓流ドラマで見たフライドチキンを食べて、ビールを飲んでみたい」という願望が現れた結果である可能性があるということだ。そして、局長が語ったように正恩氏が「詳細まで指示した」というなら、これは正恩氏の「趣味」ではないのか。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国の情報機関、国家情報院は先ごろ、国会情報委員会の国政監査で、正恩氏が毎週3、4回ずつ夜通しのパーティー(酒宴)を開き、不摂生な生活と食習慣のために健康不安を抱えているとの分析を報告した。心血管疾患の高リスク群に入るという。
(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙)たしかに、正恩氏の体重はどんどん増えている。もしかしたら、その原因の相当部分は「韓国風のおつまみ」から来ているのではないか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。