かねてから、北朝鮮の金正恩党委員長は平壌市郊外や地方へ陸路で現地指導に行く際、高級SUVに乗っていることが知られていた。そしてこのほど、その車種が何であるかを特定する上で有力な手掛かりが示された。
提供してくれたのは他でもない、北朝鮮の公式メディアである。
自分の「ヘンな写真」も
朝鮮労働党機関紙の労働新聞と朝鮮中央通信は13日、正恩氏が朝鮮人民軍第810軍部隊傘下の第1116号農場を現地指導したと報じた。そして同時に公開された写真に、正恩氏が乗って来たと思しきSUVの車影が写っているのだ(下の写真)。
かなり小さく写ってはいるものの、車種の見当を付けることはできる。そのSUVとは、英ランドローバーの「レンジ・ローバー」である。
もちろん、これが正恩氏の愛車であるという証拠はない。ただ、日本国内のカタログ価格が廉価モデルで約1400万円、最高級モデルで約3000万円という高級車である。経済制裁が続く中、入手困難なSUVを、「走り屋」として知られる正恩氏が他の人間に渡すとは思えない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ちなみに件の写真をよく見ると、SUVの背後にもう1台、背の高い白い車が写り込んでいる。
こちらはメルセデス・ベンツの「スプリンター」と見られる。正恩氏をサポートする医療チームが乗っているのかも知れない。しかしそれにしても、最新兵器から自分の「ヘンな写真」まで気前よくホイホイ公開してしまう正恩氏だが、自分が乗っている車を知られて不安ではないのか。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面米韓の軍部内には正恩氏に対する「斬首作戦」の推進論がある。実行するなら、正恩氏の「愛車情報」はこの上なく重要だからだ。
それともうひとつ、気になることがある。ある事情から普通の人と同じトイレを使えない正恩氏は、愛車に専用の装備を積んでいると言われる。もしかしたら彼の乗るSUVは、世界に1台だけの「トイレ機能付きレンジローバー」なのだろうか。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。