北朝鮮の「水攻め」を韓国が否定する理由

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朝鮮半島に停滞する梅雨前線の影響で、大雨が続く中、北朝鮮が6日午前、突然ダムの放流を始めたと韓国メディアが一斉に報じた。

韓国軍関係者によると、放流が始まったのは、軍事境界線付近を流れる臨津江(イムジンガン)の上流にある北朝鮮の黄江(ファンガン)ダム。貯水量は3~4億トンと推定されている。

北朝鮮は午前6時ごろに水門を開いたものと見られるが、韓国側は一切通知を受けていないとのことだ。軍と行政当局は、流域に警告放送を流し、川べりにいた人を避難させるなど、対応に追われている。

北朝鮮のダム放流により、韓国で洪水が発生し、流域の田畑が浸水するだけではなく、軍事境界線付近に埋設された地雷が流れだす危険性も高まる。

過去には、北朝鮮が通告なしに放流を始めたことで、被害が出た実例がある。2009年、北朝鮮側は予告なしにダムの放流を始め、川の水位が急激に上昇。臨津江の河原でキャンプや釣りをしていた6人が流され、死亡する事故が起きた。

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その直後に行われた南北協議で「ダム放流は事前に通告する」と合意されたが、それが破られた形だ。

一方で、軍関係者は今回の放流について「水門をゆっくり開けていることを見ると、ダムの水位を調節するためのものと思われる。水攻めの意図はないと見ている」と述べている。軍関係者が「水攻め」を否定するのは、歴史的な経緯がある。

北朝鮮当局は1986年、ソウル市内を流れる漢江の上流に金剛山ダム(任南ダム)の建設を始めた。当時の全斗煥軍事政権は「北朝鮮がダムを作るのは、アジア大会やオリンピックを妨害するために、ダムを意図的に破壊して、ソウルを水没させるのが目的」だと騒ぎ立てた。

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政権は、金剛山ダムのすぐ下流に水攻めを防ぐための「平和のダム」の建設を決定し、建設費を募金で集めるため国民的なキャンペーンを展開した。ところが真の狙いは、当時盛り上がりを見せていた民主化運動から国民の目をそらすことにあった。そのために政権が北朝鮮の脅威を大幅に誇張していたことが、民主化された後に明らかになり、大問題となったのだ。

それ以来、大雨が降るたびに「北朝鮮が水攻めを仕掛けてくるのではないか」との話が立ち上がるようになった。今回も、一部の右派系メディアでそのような論調が見られる。