権力者にもてあそばれ…北朝鮮「偽りの男女平等」に復讐する女性たち

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国連北朝鮮代表部に派遣されている外交官29人全員が男性で、女性の外交官が1人もいないと、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。VOAは、北朝鮮から国連に派遣されている外交官名簿を分析。その結果、という。

バツイチ男性を襲う餓死の恐怖

北朝鮮以外ではウズベキスタンが女性外交官を1人も派遣していないが、同国は各拠点に2〜3人しか派遣しておらず、外交官の数自体が少ない。こうしたことから、VOAは「ある程度の規模の代表部を運営する国のうち、男性の外交官しか派遣していないのは事実上、北朝鮮だけだ」と指摘。こんなところにも北朝鮮の女性蔑視があらわれているようだ。

北朝鮮は名目上、社会主義体制で男女平等を謳っている。しかしながら、その実態は旧態依然とした儒教的な家父長制を引きずり、社会のいたるところで女性差別がまかり通っている。とりわけ一部の権力者たちは、女性に対してやりたい放題だ。

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この問題が複雑なのは、差別や人権侵害を被った当事者である女性がそもそも人権の何たるかを知らないために、自分が人権侵害の被害者であるということにすら気づかない。つまり、社会全体が女性問題に対して鈍感になっているだけに根が深い。

一方、こうした女性蔑視社会に対して、当の女性たちが意外な形で復讐する動きも見えつつある。

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例えば、北朝鮮の市場での主力は女性であり、薄給の男性たちに代わって、一家の大黒柱になりつつある。しかし、夫の方は大して働きもせず、家ではタバコをふかしながらゴロゴロし、酒を飲んではくだをまく――こうした役に立たない亭主関白の男性に三行半を突きつけるケースが増えているのだ。そして、女房に捨てられた男性は、生活力もなく商売もできず、「餓死の恐怖」に襲われている。

国連北朝鮮代表部に、女性外交官が一人もいない問題だけでなく、北朝鮮社会の生々しい女性人権侵害の実態、そして、そうした理不尽な境遇に抵抗するたくましい北朝鮮女性たちのリアルな姿を伝えることも重要だ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記