スパイ容疑の芸術家を「機関銃で粉々に」

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北朝鮮の人権問題を担当する国連特別報告者が、金正恩第1書記に対して「人道に対する罪」を問う可能性を強調している。「人道に対する罪」は、戦時・平時にかかわらず、一般人に対してなされた殺戮、殲滅、奴隷的虐使、追放その他の非人道的行為などに対して問われる国際法上の犯罪だ。

北朝鮮における人権に関する国連調査委員会は、その最終報告書において、 「北朝鮮の政治体制及び指導部にとって脅威になるとみなされた国民」「並びに国家転覆の影響を及ぼすとみなされた者が、組織的で広範な攻撃の主な対象となっている」として、これが「人道に対する罪」に該当すると指摘している。

そして、こうした「攻撃」の主な手段のひとつが公開処刑だ。

たとえば、昨年3月に処刑された北朝鮮「銀河水管弦楽団」のメンバーら4人の凄惨きわまりない殺され方について、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

平壌在住の情報筋がRFAに語ったところによると、韓国国家情報院のスパイであるとして逮捕されたキム・グッキ氏と関係を持ったかどで、銀河水管弦楽団の総監督、40代の男性初級幹部2人、40代女性の合計4人が平壌郊外の「美林ポル」という場所で銃殺された。

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総監督は60年代に日本から帰国した在日朝鮮人で、ロシア留学後に総監督に就任、作曲と編曲を担当していた。今回処刑された4人の具体的な容疑は明らかになっていないが、処刑が執行される直前に韓国のスパイと関係を持ったとの内容が読み上げられたという。

銃殺刑は、北朝鮮では珍しくない。

しかしこのときの処刑は、平壌在住の芸術関係者400~500人を集めた中、4人全員を裸にして立たせ、2丁の機関銃を体が粉々になるまで乱射したという。

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こうした様子について伝え聞いた人々は、あまりの惨たらしさに驚きを隠し切れない様子だと情報筋は伝えている。

情報筋によると、処刑された人物の家族はいつの間にかどこかに消え去るのが常だが、今のところ、処刑された総監督らの家族は平壌に残っているという。しかし、外出している様子がうかがえないことから軟禁状態にあると見られ、まもなく収容所や山奥に送られる可能性が高いと伝えた。

こうした行為は体制の権威、つまりは最高指導者の権威を恐怖によって維持することを目的にしており、金正恩氏に対する責任追及は当然であると言えるのだ。

(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記