米軍が進める「安価な大量ミサイル」構想 中国念頭に戦争の形を変えるか…5年間で約3万発を調達

米空軍が、比較的安価で大量生産が可能な新型長射程ミサイル群の開発を水面下で加速させていることが明らかになった。米軍事専門メディア The War Zone がこのほど、米空軍の予算関連文書や調達資料を精査した結果として報じたもので、構想の名称は FAMM(Family of Affordable Mass Missiles)。直訳すれば「低コスト大量配備型ミサイル群」である。高価な精密兵器への依存から脱却し、「安く、多く、遠くまで届く」兵器を大量に備蓄することで、将来の大規模戦争に備える狙いがあるとみられる。

FAMM構想の背景にあるのは、米軍が近年強める「弾薬不足」への危機感だ。主力の長距離巡航ミサイルである AGM-158 JASSM や対艦攻撃用の長射程兵器はいずれも高性能だが、1発あたりの価格は高く、生産能力にも限界がある。台湾有事などを想定した場合、開戦初期の集中投入で在庫が急減する恐れが以前から指摘されてきた。

こうした反省から浮上したFAMMは、性能をある程度絞る代わりに、単価を数十万ドル級まで抑え、大量調達を可能にする発想だ。射程は1000海里級ともされ、中国の長距離防空網や対艦ミサイルの脅威圏外から発射できる能力を目指す。輸送機からパレット方式で一斉投下する構想も取り沙汰されており、「ミサイルを航空機の爆弾のように大量投射する」運用が現実味を帯びつつある。今後5年間で28,000発を調達する計画だという。

注目されるのは、米軍の発想の転換である。これまでの「少数精鋭の高性能兵器」中心の戦い方から、「ある程度失われることを前提に大量投入する消耗型兵器」へと軸足を移しつつあるからだ。背景には、中国軍が極超音速兵器、長距離地対空ミサイル、対艦弾道ミサイルを組み合わせて接近阻止能力を高めている現実がある。高価な兵器だけでは数で押し切られる恐れがあるとの危機感が、米軍内部で強まっている。

(参考記事:【写真】プーチン別荘上空の決戦、勝者は誰か…ウクライナが手にする「最新兵器3350発」の威力

関連計画には新興企業も参入しており、低価格・大量生産を前提とした兵器産業の再編も始まっている。アンドゥリル社の「バラクーダ」シリーズは、自動車産業などで使われる汎用部品を活用することで平均約22万ドルという画期的な低コスト化を実現した。

軍事専門家の間では「FAMMは単なる新型ミサイル計画ではなく、米国の戦争遂行能力そのものを“量の時代”へ戻す試みだ」との見方も出ている。